不況にあえぐ福祉の町・信楽町 知的障害者にもあおり /滋賀

不況にあえぐ福祉の町・信楽町 知的障害者にもあおり /滋賀

 ◇ノーマライゼーション後退 「再雇用の意思」が救い
 知的障害者を積極的に雇用するなどノーマライゼーションの先進地、甲賀市信楽町。知的障害者が地域に温かく受け入れられていることから「福祉の町」とも形容されてきた。だが、そんな優しい町が今、苦境に立たされている。雇用を支えてきた地場産業の信楽焼の販売が低迷し、メーカーがやむを得ず知的障害者を解雇するケースが増えているのだ。「あしたから来なくていいよ」。経営者が絞り出す一言。厳しい現実が知的障害者らに降りかかっている。【金志尚】

 同町長野の陶器メーカー「加陶」。3年ほど前までは18人の知的障害者を雇用していたが、現在は7人。健常者も同様にリストラしている。加藤善久社長(50)は「売り上げが好調だったころは、(知的障害者)2人で一人前でもよかった。しかし、業績低迷時には、抱えきれない。人を減らすのは本意ではないが…」と残念そうに話す。

 同社は02年ごろから売り上げが急降下。昨年4月に民事再生手続きを申請し、裁判所から保全命令を受けた。売り上げ減少は安い輸入品に押されたためだ。「2年前、知的障害を持つ女性社員に『あしたから来んでいい』と伝えると、『何で来たらあかんねん。うち、ここにいたいねん』と泣きつかれた。つらかった」

 今、陶器メーカーはどこも苦しんでいる。伝統産業を盛り上げようと同町は06年、県から経済特区の認定を受けたが、再生への道は険しい。信楽陶器工業協同組合によると、08年の生産高は52億8380万円(96業者)。過去最高だった92年の約168億円(135業者)という数字がかすむ。知的障害者を雇用する業者でつくる「信楽職親会」の加盟数もピークの50業者(99年)から34業者(昨年)に。雇用は145人(97年)から73人(昨年)に半減した。

 失業後、再就職を目指す人もいるが、簡単ではない。03年設立の知的障害者支援施設「ワークセンター紫香楽(しがらき)」(同町神山)では現在、12人が就職のための訓練を受けているが、うち8人が以前、陶器メーカーに勤めていた人たちだ。陶器作りは単純作業が多いことなどから知的障害者に適していると言われるが、施設長の滝井康雄さん(48)によると、「今、陶器メーカーからの求人はない」。

 救いは、経営者たちに再雇用の意思があることだ。加藤社長は「売り上げが回復すれば、雇用も回復できると思う」と話す。十数年前の最盛期には、健常者と知的障害者を合わせて130人以上を雇っていた「城山陶器商事」(同町江田)の従業員は現在10人で、うち2人が知的障害者。北村雄次社長(58)は「景気が良くなれば、また知的障害者の雇用を戻したい」と言う。50年以上の歴史を持つ知的障害児施設「県立信楽学園」(同町神山)など、町と知的障害者の接点は元々多く、経営者たちが彼らを抵抗感なく受け入れられることも大きい。

 今後、雇用が再び活発になるのはいつだろうか。「信楽焼は世の中の景気動向と一致しない業界。バブル崩壊後も、ガーデニングブームで売り上げが伸びたこともある。ただ、付加価値のある製品を作り、販売方法も工夫しないといけませんがね」。加藤社長の前向きな話しぶりに少し救われた気がした。

 毎日jp
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