調書漏えい:精神科医に有罪判決 守秘義務重視 奈良地裁

調書漏えい:精神科医に有罪判決 守秘義務重視 奈良地裁

2009年4月15日 13時33分 更新:4月15日 13時41分


奈良地裁に入る崎浜盛三被告(前列左)ら=奈良市で2009年4月15日午後0時49分、森園道子撮影
 奈良県田原本町の母子3人放火殺人事件を題材にした単行本を巡る供述調書漏えい事件で、刑法の秘密漏示罪に問われた精神科医、崎浜盛三被告(51)に対し、奈良地裁(石川恭司裁判長)は15日、懲役4月、執行猶予3年(求刑・懲役6月)の有罪判決を言い渡した。石川裁判長は「少年の利益を図るためとはいえない。取材に対する協力としても、正当な理由があるとは認められない。被告の精神鑑定は医師の業務にあたる」と理由を述べた。プライバシー侵害を理由に取材協力者が逮捕された異例の事件だけに、今回の有罪判決は、取材活動に影響を及ぼす可能性もある。

 問題の単行本はフリージャーナリスト、草薙厚子さん(44)=嫌疑不十分で不起訴=の「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)。

 判決などによると、崎浜被告は自宅に放火した当時高校1年の長男(19)=殺人などの非行内容で中等少年院送致=の精神鑑定を担当。06年10月に供述調書や鑑定書を草薙さんらに見せた。

 秘密漏示罪は医師らが正当な理由がないのに、業務上知り得た人の秘密を漏らした場合に適用される。公判では調書を見せた行為の正当性を巡り、検察側と弁護側が対立した。

 検察側は「少年法の精神を根底から破壊。立ち会いや見せる物の限定をせず、長男や父親に閲覧の了解を得ていない」と違法性を主張。弁護側は「長男に殺意がないことを伝えたいという正当な理由があった。草薙さんらにコピーを禁じ、閲覧だけを許した」と反論、無罪を主張した。

 また、弁護側は「精神鑑定は裁判所の判断を補助するもので、治療目的ではない」などと、医師としての業務ではないとも主張。検察側は「被告は医師の資格に注目されて鑑定人に選任され、医師として鑑定業務をした」として、秘密漏示罪の対象になるとした。

 最高裁によると秘密漏示罪の判決は、少なくとも統計が残る78年以降は例がない。表現の自由と公的機関が持つ「秘密」を巡って刑事裁判に発展した例も、沖縄密約事件(71年)など、ごくわずか。判決はプライバシーや守秘義務を重視する最近の流れに沿ったものとなった。【高瀬浩平】

 ◇秘密漏示罪とは
 刑法134条で医師、薬剤師、助産師、弁護士、公証人の他、過去にこうした職にあった者が、業務で知り得た秘密を正当な理由なく漏らすことを禁止している。被害者の告訴が必要な親告罪。罰則は6月以下の懲役または10万円以下の罰金。

毎日jp



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