いのちの電話ピンチ 相談員、慢性的不足

いのちの電話ピンチ
相談員、慢性的不足

相談の電話を受ける相談ボランティア(札幌市で)
 30年間にわたって、昼夜を問わず、悩みを抱える人たちの話に耳を傾けてきた社会福祉法人「北海道いのちの電話」。昨年の道内の自殺者数は1726人と全国で4番目に多く、その役割は重みを増しているが、慢性的な相談員不足を抱え、不況で企業からの寄付金も落ち込みが予想されるなど、厳しい運営を迫られている。(井沢宏明)

 「それは、おつらいでしょうね」――。平日の昼下がり。受話器を取った相談員が電話の向こうの声に耳を澄まし、静かにささやいた。不況を反映してか、将来や仕事への不安を漏らす男性からの相談が増えているという。

 1979年1月にスタートした同電話では現在、約145人のボランティアが交代で相談員を務めている。しかし、昼間は2、3人で相談に応じることができるものの、電話が集中する深夜帯に当番に就くことができるメンバーは1人確保するのがやっと。相談員の大半は主婦や高齢者で、家事、親の介護などを抱えており、夜間の活動ができない人が多いためだ。

 相談件数は年間で約1万7000件。1人で約100件もの相談を受けている計算だが、「電話がつながらない」という苦情も少なくない。昨年12月でみると、1日平均で延べ約1500件の着信があったのに対し、相談員が応じることができたのは、約50件だけだった。

 相談員になるためには、1年半にわたって心理学やカウンセリングなどの研修を受けなければならない。これまで、対象を「25歳~63歳程度」としていたが、今年3月の募集から、受講資格を「20歳以上」として年齢制限を事実上、撤廃した。臨床心理士を目指す学生や、時間に余裕ができた団塊世代の定年退職者にも応募してもらうことで、深夜のメンバーを充実したいとの願いからだ。

 現在募集中の研修は、7月からスタート。訓練を受けても、相談の厳しさに気がめいることもある。それでも、「最初の『もしもし』という声と『ありがとう』と電話を切るときの声が変わるのを聞くとやめられない」という人も多いという。

 一方、運営費が先細りなのも心配材料だ。同電話は運営費の約8割が支援会員の寄付だ。自治体などに自殺対策を義務づけた「自殺対策基本法」が2006年に施行されたが、道と札幌市の補助は今年度もそれぞれ100万円と80万円にとどまっている。

 今年度は約1680万円の予算を見込んでいるが、企業からの寄付金が不況で落ち込むことを見越して昨年度実績より約200万円少なく見積もらざるを得なかった。事務局の人件費を切りつめるなどして対応するという。

 高杉純二事務局長は、「今はいのちの電話の正念場。寄り添う気持ちさえあれば、相談員はできる」としている。相談員養成の研修の申し込みは4月30日まで受け付けている。応募方法などは事務局(電011・251・6464)か、いのちの電話のホームページ(http://www.inochi‐tel.com)で確認できる。

 「いのちの電話」の相談番号は、(電)011・231・4343まで。ファクス相談の受け付けは011・219・3144。

(2009年4月26日 読売新聞)

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