「橋渡し」に尽力、SSWが2年目 位置付け定まらず予算など不安定

「橋渡し」に尽力、SSWが2年目 位置付け定まらず予算など不安定

2009年5月26日

 児童生徒を取り巻く問題にかかわり、学校や家庭、関係機関を橋渡しする「スクールソーシャルワーカー(SSW)」が昨夏、国の委託で県内に初導入された。2年目を迎え、現状や課題はどうなっているのか。約30件を担当してきた県教育委員会南信教育事務所(伊那市)の例などを基に、SSWの活動の一端をのぞいた。
 「不登校の生徒と、その保護者と連絡が取りにくくなっている。家庭の様子がよく分からない」。昨年後半、管内の中学校から事務所に連絡があった。社会福祉士のSSW弓田香織さん(35)は、事務所の担当者や学校と協議を始めた。
 生徒は1年近く不登校。学校やカウンセラーの働き掛けで何度か登校したが、長くは続かなかった。SSWだからといってすぐに会える保証はない。
 弓田さんは生徒に手紙を書いた。「今はあなたの体にとって大事な時期。長く健康診断を受けていないことが心配です。手伝えることがあると思う」。そこに、こんな言葉を付け加えた。
 「制服が心配ならそれも言ってほしい」。成長してサイズが合わず、恥ずかしいと感じるかもしれない。相手の立場で、何が必要かを想像した。
 数日後、学校側と一緒に家庭を訪ねた。生徒は扉を開けてくれた。「今から一緒に保健室に行ってみない?」。その投げ掛けに「行ってみようかな」。今は毎日、学校に通っているという。
 弓田さんは「本人も不安だったと思う。自然な形で学校に戻るきっかけがつくれたのでは」と振り返る。健康診断も「きっかけ」の一つ。何が必要かを探りながら、さまざまな人や社会の仕組みとつなげることが、SSWの仕事の根幹だ。
 学校や家庭に限らず、場合によっては病院や児童相談所に取り次ぎ、生活保護の申請も助言する。働き掛けるのは子どもを取り巻く環境のすべて。そのために、専門の理論や技術が求められる。
 「教職員だけではSSWの『外の風を入れる』視点は見つけ難い」と、元小学校長で事務所の巡回訪問指導員を務める保科勇さん(61)は言う。学校側は電話での助言だけでも気付くことは多いという。「学校との連携はますます重要になる」
 だが一方で、SSWの位置付けは定まっていない。小児病棟での勤務経験がある弓田さん自身も「SSWとしては、まだ手探りの状態。研究会に積極的に出席している」と言うように、国内に専門家は少なく、養成は始まったばかりだ。
 社会福祉士から選ぶ県のようなケース以外に、教員を採用する自治体もある。学校に常駐するのと、要請に応じて赴くのとでも動き方は変わってくる。現状では、SSWの肩書が必ずしも同一の基準や理論を示しているとは言えない。
 予算や報酬面でも不安定な状態が続く。本年度は、国から県への補助金が3分の1の約1000万円に減額。昨年度は2000万円の国費を充てた須坂と飯田両市のSSW事業も、今年はすべて市費で賄っている。
 ただ、須坂市教委は「方針は変えない」と計画通り、SSWを務める元教員らの配置を2人から4人に増加。飯田市教委も「数年間は続けないと効果は見えない」と、縮小しない考えだ。
 (妹尾聡太)
 【スクールソーシャルワーカー】 米国で発達し、日本では1980年代に今の枠組みができ始めた。スクールカウンセラーが心の面から支援するのに対し、本人に影響する環境全体に働き掛けて支援の輪を築く。資格はないが、多くは社会福祉士や精神保健福祉士、元教員らが務める。県は昨年、4教育事務所に1人ずつ、両福祉士から配置した。

中日新聞

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