精神医療改革:見直し報告 「統合失調」入院15万人に 14年めど4万6000人減

精神医療改革:見直し報告 「統合失調」入院15万人に 14年めど4万6000人減

 ◇病名で目標値
 国が04年に策定した精神医療の改革ビジョンの見直しを進めていた厚生労働省の検討会は17日、05年に19万6000人だった統合失調症の入院患者を14年までに4万6000人減らし約15万人とする新たな数値目標を盛り込んだ報告書をまとめた。これまでは、社会で受け皿が整えば退院可能な「社会的入院」患者約7万人の解消を目標としてきたが、認知症患者の精神病床への受け入れで精神障害との区分けがあいまいな「社会的入院」が急増しているため、より明確な病名での目標値に改めることにした。【江刺正嘉】

 今年が改革ビジョンの折り返しに当たるため、14年までの10年間で社会的入院をゼロにし、精神病床も約7万床削減することを柱としていた当初計画を検証した。

 厚労省の調査では05年の精神病床の入院患者は32万4000人。6割を占める統合失調症は99年に比べ7%減の19万6000人だったが、急激な高齢化で認知症患者は42%も増え5万2000人となった。02年に約7万人とされた社会的入院患者も05年には約7万6000人に増え、先進国の中で突出している精神病床数も06年で約35万床と、ほとんど削減が進んでいない。

 統合失調症に関する新たな数値目標は現行の施策による患者減少数をほぼ倍にする内容。報告書では、認知症の入院患者についても同省が現在実施中の実態調査に基づき、11年度までに削減目標を数値化することを求めた。目標達成のための施策として精神科訪問看護などの在宅医療充実や、精神科救急の体制整備を挙げている。

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 ■解説

 ◇医療観察法、実績示さず 説得力欠く
 精神医療の改革ビジョンを5年ぶりに見直した今回の検討会の報告書は、ビジョンと対で「車の両輪」とされた心神喪失者医療観察法(05年7月施行)を議論の対象外としたことで、説得力を欠くものとなったと言わざるをえない。

 殺人などの重大事件を起こし不起訴や無罪になった人に裁判所が入・通院を命じる医療観察法は、法案審議段階から「精神障害者への重大な人権侵害」との批判が起き、与党だった自民党などが「地域生活の支援策も充実させる」ことを約束。これを受けビジョンがまとめられた。

 同法は施行後5年をめどに見直すことが法で定められている。厚労省は「(5年となる)来年7月までは見直し論議はしない」として、検討会の議題にせず、法の目的とされた対象者の社会復帰の具体的な状況についても明らかにしていない。

 最高裁、法務省と3者で運営する同法は厚労省分だけで年間260億円(10年度概算要求)、入院患者1人に月約180万円の国費が投じられおり、精神障害者を地域で支援する費用との格差を指摘する声が出ている。法制定時に反対していた民主党が政権を取ったことで来年の見直し論議が注目される。厚労省は来年を待たずに、車の両輪である同法の運用実績を公表し、精神医療の全体状況を国民に示す義務がある。【江刺正嘉】

英訳

毎日新聞 2009年9月18日 東京朝刊

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