昨年の自殺 39増262人 増加率、全国最悪 30歳代 7割増39人

昨年の自殺 39増262人 増加率、全国最悪 30歳代 7割増39人

 長引く景気の低迷で、雇用環境が厳しさを増す中、「うつ病」や「生活苦」などを理由にした自殺が急増した、との調査結果を警察庁がまとめた。昨年1年間の県内の自殺者数は、262人(前年比39人増)。人口10万人当たりに占める自殺者の割合(自殺率)は34・2人(同5・4人増)と全国平均(25・8人)を大きく上回り、増加率では全国最悪を記録した。県内での自殺者は13年連続で200人を突破しており、官民挙げての対策強化が急務となっている。

 県警生活安全企画課によると、男性が180人と全体の7割を占め、年齢別では、働き盛りの30歳代が39人と前年比で7割増となったのが目立つ。年齢別では▽19歳以下が3人(前年比同)▽20歳代が17人(同6人増)▽30歳代が39人(同16人増)▽40歳代が32人(同1人増)▽50歳代が49人(同6人減)▽60歳以上が120人(同24人増)。

 動機別では、▽ガンやうつ病などの健康問題が142人(同14人増)▽多重債務や失業、生活苦などの経済、生活問題が82人(同12人増)▽夫婦関係の不和などの家庭問題が61人(同16人増)▽仕事の悩みや職場の人間関係などの勤務問題が15人(同2人増)だった。

 一方、県内の生活保護受給世帯は、昨年12月現在で1万3934世帯(速報値)と1997年以降、増え続けている。厚生労働省は今年初めて、生活保護を受給中に自殺した人を過去3年さかのぼって調査したが、県内では07年3人、08年6人、09年14人と年々増加。うち13人が精神疾患を抱えており、20人が一人暮らしだった。

 自殺予防を目的とした相談電話を運営するNPO法人「高知いのちの電話協会」の前田宗明事務局長は「就職難や県民所得の低さなど、県独自の要因も複雑に関係している。50歳代の自殺者が多く、貧困や格差の広がりも感じる。生活への不安がアルコール依存症や家庭内暴力の要因となり、うつ病や自殺につながる。負の連鎖を絶つための根本的な対策が必要だ」と指摘する。

 全国一の増加率となったことに県障害保健福祉課は「都市部と比べ、不況の波が遅れてくる県独自の事情が背景にあると思う。自殺せずに解決する方法は必ずある。一人で悩まないで相談して」と呼びかけている。

<若者のうつ病深まる孤立>

 一流大学を卒業し、民間企業に就職した20歳代の男性は、うつ病を患い、マンションで一人暮らし。外出することすらままならず、毎日の食事はコンビニ弁当で、食べたり、食べなかったりを繰り返している。

 同僚らとコミュニケーションがうまくとれず、入社3か月で、軽いうつ病と診断され休職。3か月後に復職したが、完治しないまま出社したため、営業の仕事で大きな失敗をし、翌日から出社できなくなった。

 会社の前までは何度か足を運んだが入ることができず、次第に引きこもるように。誰にも相談できず、一人で悩み続け、「これからどうやって生きていけば」「死んだ方がまし」と眠れない日が続いているという。

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 ここ数年、20、30歳代の若い世代に「失業」や「就職失敗」「生活苦」などを理由にうつ病を患うケースが増えており、患者の中には、誰にも相談できず、孤立を深める人が目立つという。

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 「高知いのちの電話」相談員の話「うつ病になると、起きあがることすら苦痛で、戦っても戦ってもなかなか抜け出せない。周囲からは『甘えている』と誤解され、より孤独感を深め、『死んだほうがましだ』と、さらに自分の殻にこもっていく。周囲が、SOSのサインにいち早く気付き、病気を理解し、その人の目線に立って親身に話を聞いてあげることが何よりも大切だ」

<県、防止へ相談窓口紹介>

 県は2009年4月、自殺対策行動計画を策定し、16年までに05年比で自殺者を20%以上減少させる方針を明記した。09年5月には、県立精神保健福祉センター(高知市丸ノ内)に自殺予防情報センターを開設し、県内に50以上ある相談窓口を紹介するなど、うつ病患者の早期発見にも取り組み、自殺対策に力を入れている。

【相談窓口の連携】

 自殺予防情報センターには、精神保健福祉士や心理学の知識がある職員らを配置。月~金曜日の午前8時半~午後5時15分、来所や電話で応じ、他の相談機関を紹介している。自死遺族の支援や、相談機関の職員の研修なども行っており、今月11日までの1年間で626件の問い合わせが寄せられたという。

【早期発見】

 県内のうつ病患者は、通院1794人(10年3月末現在)、入院223人(09年6月末現在)。県は、不眠など、うつ病の可能性がある患者を地域のかかりつけ医が早期に発見し、精神科医へ紹介する仕組みをつくるため、08年度から一般の医療機関を対象に研修会を行っている。今年度中に一部医療機関で試行し、来年度からの本格導入を目指す。また、自殺者の10倍いるとされる自殺未遂者を支援するため、県は、救命救急センターに搬送された患者を退院後に保健師が定期的に訪問し、心のケアを行う事業も年度内にスタートさせる。

【人材育成】

 「高知いのちの電話」への09年の相談件数は453件と、3年前の1・9倍に急増している。約130人いる相談員のうち、実働は83人で、午前9時~午後9時の相談時間を24時間体制にするには200人が必要。相談員確保が急務となっており、県は、養成講座の開催を支援している。

◇自殺予防の主な相談電話◇

 ▽自殺予防情報センター(電)088・821・4506

   自殺予防についての情報提供

 ▽高知いのちの電話(電)088・824・6300

   自殺を防ぐための相談専用電話

 ▽県立消費生活センター(電)088・824・0999

   多重債務など消費生活問題

 ▽県心の教育センター(電)088・833・2922

   不登校やいじめなど教育問題

 ▽ハローワーク高知(電)088・878・5320

   雇用、労働問題全般の相談

読売新聞

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