自殺未遂調査/行政が関与して命を救え

自殺未遂調査/行政が関与して命を救え

 全国でもほとんど例がない自殺未遂者調査を福島県がまとめた。回答した救急病院の多くは未遂者への精神的なケアが必要だと認識しつつも、態勢が整っていないことを訴えている。
 自殺未遂は繰り返されるケースが多い。未遂時の対応はそのまま自殺防止策につながる。病院任せにしないで行政や専門知識を持つNPOなどが積極的にかかわらなければ、解決には結び付かない。
 福島県は昨年の6月と11月、県内の全救急医療機関(84施設)にアンケートを行い、自殺を図って救急搬送された人について調べ、どんな支援態勢が求められているのかを探った。
 救急病院の役割はもちろん自殺を図った人の治療に全力を尽くすことだが、ほとんどの病院は同時に精神的なケアの必要性を認めている。それも当然だが、大半は「ケアをする人も時間もない」「精神症状の評価が難しい」と悩んでいる。
 未遂者への効果的な対策を考える際には、再び自殺を図る危険性をどう評価するかがポイントになる。精神科の有無にかかわらず、ほぼすべての救急病院でその危険性の確認作業をしているが、精神科を持つ病院と持たない病院とでは差があることも分かった。
 背景の聞き取りや「死にたい」という気持ちの強さなどの確認では、やはり精神科を持つ病院の方がしっかりしている。精神科がない病院は専門医との連携が必要になるが、院内に精神科医がいないと、その点でも不十分になる傾向がみられた。
 医療の現場で取り組む場合、精神科医との協力は不可欠だ。だが実際には難しく、大きな課題になっている。
 救急病院側には精神科を持つ病院への不満も強いようだ。アンケートで「心肺停止になっても、通院していた病院に搬送を拒否され、こちらに回される。そうなる前にきちんと治療してほしい」「夜間に対応してくれる精神科医がいない」といった意見も出された。
 そもそも病院に本格的な対策を求めるのは無理がある。けがや薬物中毒の治療は救急病院、その前後の精神的なケアは精神科医や心療内科医になるだろうが、ケースワーカーやNPOにも協力してもらい、組織的に取り組む必要がある。その橋渡しを行政が行うべきだ。
 自殺未遂が起きた場合、何人かのチームで救急病院に赴くような態勢を実現させないと、自殺者を減らすことはできないのではないか。本人だけでなく家族とも話し、自殺を図った理由や生活状況、治療方法などを考えることが欠かせない。
 一気にできることではないが、救急病院に運ばれた段階で可能な限り関与すれば、かなりの効果が期待できるはずだ。

河北新聞

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