【社会】 3カ月 なお傷つく子 福島・双葉町 再起の旅

福島第一原発の事故で故郷を追われた福島県双葉町の人たちが、埼玉県加須市の旧騎西高校に役場ごと集団避難して三十日で三カ月。避難所生活の長期化や、先行きの見えない不安定な環境は、子どもたちの心や学習面に影響を与えている。受け入れ先の学校は心のケアや学習支援に力を入れる。 (増田紗苗)

 「おはよう」。午前七時半すぎ、避難所から数百メートル離れた国道122号の交差点で、加須市立騎西小学校の吉田清宏教諭(52)が、避難所から集団登校してきた子どもたちを出迎えた。移転から三カ月たった今でも、避難所や近くのアパートから騎西小に通う同町の児童約八十人の中には、登校を渋る子や、学級に入れない子がいる。

 双葉町の集団移転に伴い、子どもたちは近くの騎西小、騎西中に転入。生活環境が大きく変わった児童生徒らをサポートするため、埼玉、福島両県教委は五月十六日から、同町の教員を騎西小に四人、騎西中に二人配置した。震災前、双葉南小で教頭をしていた吉田教諭もその一人だ。

 避難所近くのアパートから通う三年生の男子児童(8つ)は、六月ごろから学校を休みがちになり、登校しても双葉町の教員ら数人以外には懐かないという。児童の父親(34)は保健師などに相談しているが、「学校にいる時に震災に遭ったので、『学校へ行くと地震を思い出す』と登校したがらない。どうしたらいいか」と肩を落とす。

 子どもたちの心理状態を把握しようと、加須市教委は五月から、市のスクールカウンセラーを週一回派遣し、個別面談を続けている。面談では被災体験や心身の変化、現在の生活などについて質問。多くの子どもが原発に対し「毒」「放射能のせいで戻れない」といった恐怖感を持っていることや、「いつ双葉に戻れるのか」という不安を抱えていること、努めて元気に振る舞おうとしていることなどが分かった。

 面談を受け持つ臨床心理士竹川佳津子さんは「親も将来が不安で子どもの言葉に耳を傾ける余裕がない。子どもはそれを感じ取って言いたいことも言えず、元気に振る舞う。子育てや生活の相談に乗るなど親を含めて支援していく態勢が必要だ」と語った。

 双葉町の生徒五十九人が通う騎西中でも心のケアに気を配る。武正和己校長によると、保健室の利用は、元からいる生徒より双葉町の生徒の方が二倍ほど多い。「将来が不安で夜眠れない」「授業に集中できない」などと訴える。

 同中では始業式以来、武正校長が対話集会を開いたり、担任が個別面談をしたりと、生徒一人一人の学習環境や心理状態の把握に努めてきた。

 「演奏会や林間学校などさまざまな行事を通じ、双葉の生徒が騎西になじんできた」と武正校長。「『一生懸命勉強して、あと十年たったとき、双葉を立ち直らせるのは君たちだぞ』と、将来に希望を持てるようなそんな指導を心がけたい」と語った。

(東京新聞)

関連記事

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する