絶望の中から光見つけて 精神療法の希少な初版本 仙台へ

オーストリアの精神科医ビクトール・フランクルが創始した精神療法ロゴセラピーのゼミを主宰しドイツに住む勝田茅生さん(65)が、仙台市のゼミ生にフランクルの著書の希少な初版本を贈った。ロゴセラピーは、過酷な状況下でも患者が人生に意味を見いだすよう助力する療法。ナチス・ドイツの収容所に送られた体験を持つフランクルが始めた。東日本大震災に心を痛める勝田さんは「絶望しないでほしい」というメッセージとともに、被災地の仲間に本を託した。

 贈られたのは代表作の一つで、1946年にウィーンで出版された「死と愛」(原題「医師による魂の癒やし」)の初版本。フランクルの書籍などを管理するウィーンのフランクルセンターに所蔵されていた。
 同センターは「震災で多くのものが失われる中で、被災者や日本のために力が与えられるように願う。一つのシンボルにしてほしい」と寄贈を申し出て、日本で活動する勝田さんに委ねた。
 勝田さんは2003~07年に仙台市でゼミを開催。現在、金沢市で定期的に開催されるゼミにも仙台から参加者がいる。
 「被災地の人が持つことがふさわしい」と勝田さん。本を託された受講生の一人で、震災の復興支援活動に取り組むNPO法人「ほっぷの森」(仙台市)の白木福次郎理事長(63)は「大変光栄なこと。貴重な本をどう生かすことができるかをみんなで考えたい」と、戸惑いながらも大切な贈り物に感激している。
 8月27、28の両日開かれた講演会とゼミのために仙台市を訪れた勝田さんは「(震災という)出来事を変えることはできない。これを踏み台にして何を始めることができるかが大切。フランクルと同じように、絶望的な場所からも光や道が見えるはず」とエールを送っている。

<ビクトール・フランクル(1905~1997)>ウィーン生まれのユダヤ人医師で、ロゴセラピーの創始者。アウシュビッツなどでの収容所体験を基に人間の極限状態を描いた「夜と霧」は世界中で翻訳され、ベストセラーになった。ウィーン大医学部教授などを務め、著書に「時代精神の病理学」「それでも人生にイエスと言う」などがある。



河北新報
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