睡眠:トラブル5人に1人 健康のバロメーター


睡眠:トラブル5人に1人 健康のバロメーター



正常な睡眠と睡眠時無呼吸症候群

 寒い冬の夜は温かい布団の中でぐっすり眠りたい。しかし、なかなか寝付けなかったり、眠りの浅さに悩む人は多い。また、睡眠時無呼吸症候群や不眠症などの睡眠障害とメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や病気の関係の深さを指摘する専門家もいる。いわば睡眠は健康のバロメーターだ。睡眠のトラブルの仕組みと、安眠や快眠のコツを紹介する。【扇沢秀明】



 ◇病気80種、多様な原因 1カ月続く不眠は専門医へ

 睡眠の専門医で作る「日本睡眠学会」。同学会認定医でもある代々木睡眠クリニックの井上雄一院長によると、訪れる患者のうち、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、昼間の眠気がそれぞれ2~3割、睡眠のリズム障害が1割、寝ぼけが1割ぐらいという。

 井上院長は「睡眠に関する病気は約80種類ある。心理的な原因、身体的原因、両者が複合した原因など、本当に多様だ。5人に1人は睡眠に何らかの問題があり、3~5%程度は睡眠薬を服用しているとされる」と話す。

 どの原因でも1カ月以上不眠が続けば、専門医ら医師の診断を受けた方がよい。軽度なら内科で十分だが、生活習慣の見直しや心理的背景を探る必要があったり、心の悩みがある場合は精神科、心臓が悪い場合は循環器科などが協力して治療するため、ケースに応じて受診することが大切だ。

 井上院長は最初の問診でじっくり患者の話を聞く。その後、一晩泊まって心電図や脳波、呼吸や筋肉の動きなどを調べる検査入院や、日常生活の行動記録を2週間つけてもらうことなどを経て、病気を診断する。



 ◇「むずむず脚」とリズム障害増加

 最近、井上院長が多いと感じるのは、「むずむず脚症候群」とリズム障害。頭は眠くなるのだが、体、特に脚がむずむずして眠れず、睡眠薬も効きにくいのがむずむず脚症候群。原因は不明だが、脳の神経伝達物質の一種、ドーパミンの機能を高める薬が効くという。

 若者に多いのがリズム障害。昼夜逆転したり、睡眠時間が不規則になることで、日中に眠気に悩まされるなど、体のリズムがずれてしまう。強い光を浴びてリズムを戻す光療法などがある。



 ◇高齢者は目が覚めがち 早い入浴、朝の散歩が効果

 加齢に伴う悩みもある。睡眠は一晩に深い睡眠と浅い睡眠とレム睡眠(体は眠っているが、脳が起きている状態で夢を見やすい)の周期を4~5回繰り返す。しかし、高齢者医学が専門の岡本克郎・クリニック東陽町院長は「高齢者は睡眠にメリハリがなくなり、目が覚めがちになる」という。

 定年退職後に生きがいをなくすなどの心理的な理由で不眠になる人も多い。「効率重視で生きてきたビジネスマンは、夜中に眠れないとその時間を無駄に感じ、ますます眠れなくなる」と岡本院長。

 高齢者が睡眠時間が減ったり、明け方に目が覚めやすくなるのは、体の活力が落ちる加齢に伴う生理的な現象で、大抵は実害がないという。人間は体温が下がり始めたころに眠りやすくなるため、早めに入浴し湯冷めするころに寝て、朝は日光を浴び30分ぐらい散歩する、などが効果的。

 高齢者の睡眠のトラブルで要注意なのは、寝ている間に起きあがって動いたり、うわごとを言う「せんもう」。年齢と関係なく起こるが、高齢者は起こしやすい。ストレスや身体の不調、薬の副作用で起きる場合がある。本人に自覚がなくても家族は気が付くので、専門医を受診した方がいい。



 ◇肥満・中年・いびき、要注意 睡眠時無呼吸、検査入院し対策を

 電車の運転士への検査体制の不十分さが問題になっている睡眠時無呼吸症候群も安眠を妨げる。日本医科大学呼吸ケアクリニックの村田朗講師は「大いびきをかく、息が詰まって起きる、朝起きたらのどが渇く、昼に非常に眠い、などの人は要注意」と話す。

 睡眠中に10秒以上呼吸が止まると、睡眠時無呼吸症候群だ。酸素が吸えず眠りが浅くなる。交通事故の一部は睡眠時無呼吸症候群が関係している、との指摘もある。

 潜在的な患者は200万人とされ、肥満、中年、いびきをかく人はリスクが高い。あおむけに眠った時は舌の根が沈み気道が狭くなるが、肥満や加齢で筋肉が緩み、気道がふさがってしまうからだ。のどの粘膜を痛める喫煙、筋肉を緩める飲酒や過労も原因の一つ。

 完全に治療する方法はないが、対策はある。専門医で1泊検査入院し、重度の場合は就寝時に空気マスクを着ける。軽度の場合は、気道を詰まらせないよう、睡眠中に下あごや舌を前方に出すためのマウスピースを歯科で作り、着けて眠る。また、横を向いて眠ると気道がふさがりにくい。

 村田講師は「睡眠時無呼吸症候群の患者は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を併せ持っている人が多い。高血圧の原因が無呼吸だった場合もある。無呼吸に限らず、睡眠障害と病気は関係が深く、眠りの面から健康をとらえ直す必要がある」と話す。



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 ◇快適な睡眠を取る10カ条◇

 1、就寝前には刺激物とカフェインは避ける

 2、規則正しいリズムのある生活を送り、適度な運動をする

 3、就寝前はリラックスしてストレスをためない

 4、朝に光を浴びて体内時計を整える

 5、寝酒は睡眠の質を悪くし目覚めやすくする

 6、冬は寝室を暖め、寒すぎないようにする

 7、よく寝ても昼間に強い眠気があれば、専門医に相談する

 8、はげしいいびき、呼吸の停止、脚のむずむず感は専門医へ

 9、睡眠薬は医師の指導と処方の下で服用する

10、8時間睡眠は信仰のようなもの。自分が「休めた」と思えれば十分

 (睡眠障害の対応と治療ガイドライン=じほう社刊=を基に作成)



毎日新聞 2007年1月15日 東京朝刊

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